雨の降る夜は
十日ほど前。仁の弟がめでたく、一ツ橋組本家のお嬢に婿入りした。その祝いの席でまさかの襲撃が起きた。標的は初めから絞ってたのか、警護が手薄だったお嬢を狙われたのか。

かすり傷程度で済んだお嬢の代わりに専属警護が一人、弾除けになって重傷を負った。仁が弟同然に可愛がってる男だった。飲んでも無口は変わらねぇが、俺も気に入っていた。

「この際、害虫は駆除しちまうに限る。手ぬるい真似はするな」

「了解してます。・・・(さかき)はまだ意識が戻らないそうで」

「そう簡単にくたばるガキじゃねぇよ」

不敵に口角を上げて見せた。

死なせるには惜しい。本音だった。次の報告を受けながら、早く戻ってこい、と胸の内で呟いた。
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