雨の降る夜は
変質者・・・じゃなかったのは不幸中の幸い。だけど断ったのに追いかけてくるなんて。不快感が湧きあがる。

私より三つ上の33歳で独身。仕事上よく話すし、気さくな性格で好感度も悪くはないと思う。ただ、今まで恋愛対象で見たことは一度だってない。・・・そういう立ち位置の人。

「・・・いえ、あの、本当に大丈夫ですよ菊池さん」

作り笑いを浮かべてもう一度。・・・空気を読め。内心で念じた。

「えーっと、ほら、二人だけってあんまりないから、もうちょっと話したいかなぁってさ」

明日も仕事で顔を合わせる相手。こじれれば厄介なんてものじゃない。・・・もしか自分に好感を持ってくれてるとしても、お友達から始める気もなくてどうしたら。

「・・・よく会うな」

そのとき甲斐さんが偶然、通りかからなかったら。私の人生はどう変わっていたのかと、今でも思う。
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