雨の降る夜は
とにかく菊池さんがどうこうじゃないのを察してほしいだけ。彼氏がいない=募集中って勝手に思い込まれても。

「すみません、わざわざ心配してもらったみたいで。明日も仕事だし、一人で帰れるので菊池さんも帰ってもらって大丈夫ですから、すみません、ありがとうございました・・・!」

早口で一息に。

自分が謝るのも違うんだろうけど先輩は先輩だ。無理やりでもうやむやに、この茶番を終わらせることしか頭になかった。

「そ・・・」

「そうだったのか」

声が重なり、くぐもり笑いで遮られた菊池さんが噤む。私に眼を細めた甲斐さんは本当に人が悪そうだった。

「俺に惚れてるなら早く言え。黙ってちゃ分からねぇよ」
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