雨の降る夜は
不敵に緩んだ口の端。面白がって話を合わせてくれてるんだろうけど、変な動悸までして、まともに顔を見ていられない。自分で墓穴を掘ったとは言え、なんの天罰かと泣きたい気分。

「もう会うこともないと思ってたが、これも縁てヤツだ。俺が送ってやる、・・・行くぞ?ミヅキ」

「え?・・・あ、はいっ」

名前を呼ばれて驚いた。心臓が聞いたこともない音を立てた。

お構いなしに歩き出した甲斐さん。慌てて菊池さんに「お疲れ様でした・・・っ」と頭を下げ、背中を追う私。横に並ぶと当たり前のように肩を抱かれて、どこまで演技が続くのか脳内はプチパニック。

男性経験がないわけじゃない。新卒で入社した前の職場で付き合った人もいた。しばらくぶり過ぎたせいで、たぶんどこか故障してるんだと思った。そっちの回路が。
< 19 / 32 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop