雨の降る夜は
一体この人にどう思われたかったのか。分からないまま、いたたまれない気持ちに。さっきから本当におかしい。これ以上一緒にいると、もっと変になりそう。

逃げるように彼の隣りから離れ、目も合わさず詫びる。

「す、みません、助けてもらってありがとうございました・・・!やっぱり一人で帰れます、このお礼は」

「礼なら今よこせ」

反射的に顔を上げ、何かを言おうとした。その刹那。躰を引っ張られた、と思った時には、唇に弾力のある感触が押し当てられて。

抵抗しようと思えばできた。菊池さんだったら突き飛ばしていた。竦んで動けなかった。

いつの間にかしなやかな舌に浸食され、それでも拒まなかった。ただココロが揺さぶられていた。答えを求めて。
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