雨の降る夜は
「・・・これで貸し借りはナシだ」
素っ気ない声だった。スイッチが切られたみたいに熱が離れ、私だけがそこに取り残されてる気がした。
今のキスは報酬代わりで、本当にもう会うこともない。・・・当然だ。別になにか期待していたわけじゃない、この人とは別になにも。
言い聞かせながら心臓が締め付けられてる、傷付いてる自分がいる。バッグの持ち手を握る指先がさらに強張った。どうしてか惨めだった。
「気を付けて帰れよ」
俯いたきりの私に少しだけ優しく聴こえた。
「あのっ」
踵を返しかけた甲斐さんの背中を、引き留めた衝動は何だったんだろう。・・・何も知らずに手を伸ばした衝動は。
素っ気ない声だった。スイッチが切られたみたいに熱が離れ、私だけがそこに取り残されてる気がした。
今のキスは報酬代わりで、本当にもう会うこともない。・・・当然だ。別になにか期待していたわけじゃない、この人とは別になにも。
言い聞かせながら心臓が締め付けられてる、傷付いてる自分がいる。バッグの持ち手を握る指先がさらに強張った。どうしてか惨めだった。
「気を付けて帰れよ」
俯いたきりの私に少しだけ優しく聴こえた。
「あのっ」
踵を返しかけた甲斐さんの背中を、引き留めた衝動は何だったんだろう。・・・何も知らずに手を伸ばした衝動は。