雨の降る夜は
極道稼業には定休もなけりゃ、大型連休もない。接待、付き合い、そこいらのサラリーマンより、切れないしがらみってヤツが多かった。

迎えに来た車に乗り込みシートに上着を放ると、ネクタイの結び目に指をかけ、一気に緩める。

今夜は、とある大手建設グループの記念式典に名代で出向いた。仁は例の襲撃以来、風穴を開けられた本家の“屋台骨”を建て直すのに手一杯だ。俺の顔を売っておけばいずれ返る、仁のところに。

腕時計に視線を落とした。鈍色の針が9時18分を指す。

CLOAK(みせ)に寄れ」

鳥居の返答を聞き流し、背もたれに体を預け目を閉じた。

気怠いのは酒じゃなく、眠れてねぇせいだろう。・・・久しぶりに女でも抱くか。馴染みの顔がいくつか瞼の裏を過った。
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