雨の降る夜は
自然と歩幅がでかくなる。シャッターが下りた店の軒下で、星も月もない真っ暗い空を見上げる女。

「・・・何やってる、こんなところで」

凄んだつもりはなかったが、出た声は抑揚もなく。一瞬体を強張らせ、ぎこちなくこっちを向いたミヅキの表情は、幽霊でも見たように固まっていやがった。

「ツレを待ってるんだったら余計な世話だったな。・・・じゃあな」

俺の名を呼びもしなかった。・・・たったそれだけで裏切られたような苛立ち。一方的に言い放って背を向けた。今度こそ終いだ。胸の内に重い鉄柵を打ち込む寸前。

「甲斐さんを待ってたんです・・・っっ」

泣きそうな声が響いた。
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