雨の降る夜は
そのまま行っちまえ。頭の隅で冷笑する俺がいる。所詮、棲む水が違う女だ。極道だと知れば呆気なく掌を返す。

「今日会えなかったら忘れるつもりでした。雨が降るたび思い出して、自分でもどうしていいか分からなかった・・・!だから、そう決めて待ってたんです」

振り絞るように必死が伝わってくる。勝手に足が止まった。背を向けて。

「会えたら答えが出るかと思ったんです、思ったんですけど・・・っ」

表情を殺してゆっくり振り返った。ミヅキは縋るような眼で俺を見てやがった。無数の針で心臓を突かれた気分だった。

「・・・言ってみろ」

上着の内ポケットからボックスの煙草を取り出し、一本咥えて火を点けた。少しは誤魔化せる。・・・手前ェの不甲斐なさも。
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