雨の降る夜は
「こっちの方がまだマシだろうが」

気が付けば厚みを感じる胸元に、自分の顔が埋まった格好で抱き寄せられていたのを。突然だったからか声も出ず、ただ石のように固まって。

普通に考えたら悲鳴をあげて抵抗するところなのに、雷のせいでどうかしてたのかもしれない。

「怖けりゃ、しがみ付いてろ」

轟音が鼓膜を震わせた間中、そのひとに縋るようにじっと。ようやく平常心を取り戻せた時には、雨も小止みになっていた。

「あ、あのっ、本当にすみません、見ず知らずの方に迷惑をおかけしてしまって・・・!」

あまりの自分の軽率さが恥ずかしいやら、悔やまれるやら。平謝り。仕事より平謝り。
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