雨の降る夜は
“TATSUMI KAI”。ローマ字で一行。裏返す。“DINING BAR CLOAK”。住所までローマ字で。

下心って。単なるお店の宣伝?やけに納得できてちょっとだけ苦笑い。

まだ空に時折り閃光が走る。雨は止んで、折り畳み傘が風に飛ばされてか見当たらない。

アパートに向かって軒下から一歩踏み出す。なんだか雷のたびに今日のことを思い出しそう。・・・声とか。力強かった腕とか。怖くなかったこと、とか。

知らず足が速くなった。誰かに聴いてもらいたくなって。

甲斐さん、・・・甲斐辰巳さんとのそんな出会いを。




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