経理部の女王様が落ちた先には
この人は、驚いた顔をしていた。
そして、1つずつ、優しく質問をしていってくれた。
どんな業務があるのか、どんな流れなのか、どんな処理をしているのか・・・。



それを1つずつ、この人に答えているうち・・・



わたしの背中が、少しずつ、軽くなってきた・・・。



「驚いたな・・・。それ、全部1人で?」



「はい、でもうちは大きな会社ではなく、中規模なので・・・。」



「中規模っていっても、あの会社は・・・」




え?と思い、この人を見上げる。




「・・・この前していた勉強、あれ簿記じゃないよね?」



「あ、はい。簿記は社会人1年目に2級まで取ったので。」



「あれ・・・税理士資格の?」



「よく、分かりましたね。
でも試験は受けるつもりはなくて。
わたし数字は好きですけど、あの試験は法律も絡んできますし、文章問題もかなり多くて・・・
今の業務が少しでも円滑に進めるように、自分のためだけの勉強です。」




そう言ったわたしに、この人は騎士の目でわたしを鋭く見た後・・・




また、深くて優しい目をして笑った。
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