経理部の女王様が落ちた先には
「俺が世話になっている人がよく言ってるよ。
会社は、生き物だって。」



「生き物、ですか?」



「そう、生き物。頭は経営陣。
心臓は何だと思う?」



鋭い騎士の目で聞かれ、わたしは首を振る。



「分かりません。考えたこともありませんでした。」



「いいね。分からないのに、その場を取り繕うだけの返事をするより、その方がいい。」



優しく笑ってくれたかと思ったら、また、鋭い騎士の目になる。



その目で、隣に座るわたしに、ゆっくりと手を伸ばした・・・。



ゆっくりと伸びてきたその手は・・・



「・・・っ」



わたしの、胸の間に置かれる。




「可愛いね・・・」




そう、少しだけ笑い・・・




「会社を、生き物を動かしてるのは、経理。
会社の心臓は、経理部だよ。
心臓が動いていなければ、手足も、頭も動かない。」




鋭い目、そこに火傷をしてしまいそうなくらい熱い、熱が見える。




「最高だろ?
その心臓、今キミが1人で動かしてるんだぞ?」




わたしの胸の間に置かれた手が・・・熱い。




「でも、そんなことは気付かれないように、ひっそりと、みんなを下に敷いて、会社を回していく・・・。」




この人が、鋭い目で・・・その目だけでどんな強敵も倒せてしまいそうな目で・・・




わたしに、笑う。




わたしに、妖しく笑う・・・。





「最高だろ?」
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