経理部の女王様が落ちた先には
「社会人5年目になりますし、税理士の科目も4つ取って・・・。」



わたしは、右隣に座るこの人のお陰で、税理士試験の科目を4つも取ることが出来た。
働きながらこんなに早く取れたのは・・・



「貴方のお陰です。
本当に、ありがとうございます。」



座りながら、深くお辞儀をする。



顔をゆっくりと上げ、この人を見る。



「なので、新しい場所、新しい環境で、今度は1から始めようと思っています。
人間関係も含め・・・」



難しそうな顔をしているこの人に、わたしも苦笑いをする。



「人間関係は、全然自信がないんですけどね!」



そう言って、窓ガラスに写る自分の顔を見る。
相変わらずキツイ顔で、何度見ても、キツイ顔で・・・。



そんな自分の顔を眺めながら、わたしは・・・



緊張で震える心を感じながら・・・



鞄から筆箱を取り出す。



そして、いつかこの人が「可愛い」と言ってくれたピンク色のウサギのシャーペンで・・・



震える手で、付箋に書いていく・・・。




何とか書き終え、付箋を1枚だけ取ろうとし・・・




震え、ガチガチに固まっているわたしの手は言うことを聞かなくて・・・




付箋を4枚くらい一気に剥がしてしまった・・・。




それを、震えたままの手に持ち、その人に名刺を渡すように、差し出す。





「これ・・・わたしの、名前と・・・連絡先です・・・。
わたし、花崎・・・花崎、麻美といいます。
これ・・・よかったら・・・。」




緊張しすぎて泣きそうになる中、震える手で持つ付箋を見詰める。




その付箋を、その人がゆっくりと受け取ってくれた。
< 94 / 213 >

この作品をシェア

pagetop