経理部の女王様が落ちた先には
「よかったです。今日、会えて・・・。」



「ああ・・・最近忙しくて・・・。」



「3月末で今の会社退職するので、明日から有給休暇の消化で・・・。
今日が・・・来られる最後の日でした。」



驚くこの人に、わたしは笑いかける。



「よかったです・・・会えて、本当に。」



何度も、何度も、会った。



落ちそうになる度、この人は現れて。



わたしを救いだしてくれた。



それは、まるで・・・



本物の騎士のようだと思っていた・・・。




「今まで、本当にありがとうございました。」




立ち上がり、深くお辞儀をする。





さっき手帳に貼ってくれた、可愛いパンダの付箋を思い浮かべる・・・。





いつか、もしかしたら、連絡が来るかもしれない・・・。





でも、この数年間・・・





この人から、名前を聞かれたことも、連絡先を聞かれることもなかったことを、思い出す。






わたしとこの人が会えるのは、この、喫茶店だけ。






そして、たまに、本当にたまに、喫茶店の外で、唇を重ねる・・・。






去るわたしを、この人は喫茶店の前でいつも見送るだけだった・・・。





「さようなら。」
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