俺を嫉妬させるなんていい度胸だ〜御曹司からの過度な溺愛〜
「新城堂のオフィスビル内で起きた転倒事故を目の前で目撃して、知らない顔をするような社長だと?」

「い、いえ……」

「社長に代わり、私が怪我の確認をするためなのですが、ご存知ないですか?」

 駿の威圧感と尤もらしい理由に答えるしかない。

「『シンジョーテック』の成宮芹さんです」

「受付とはいえ、かなりの人数の社員がいるのに名前がすぐに出るって事は、彼女は有名なんですか?」

「はあ、まあ」

「理由は?」

「まあ色々と……」

 濁されると気になるが、受付でも知っているなら、調べればすぐにわかるだろうと駿は引くことにした。

「ありがとうございました。仕事に戻って下さい」

 『シンジョーテック』とは好都合だ。社長は、グループの中でも暁に次ぐ若手で普段から交流がある。

 駿は暁のあり得ない表情を思い出し、ひとりほくそ笑みながら、エレベーターで社長室のある最上階を目指した。



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