俺を嫉妬させるなんていい度胸だ〜御曹司からの過度な溺愛〜
 板前さんがやって来て、車に何度か荷物を取りに出入りしている時だった。

 『カチャ』と扉を開く音。板前さんだと思い誰も気にしていなかった。

 だが、そのすぐ後にもう一度扉が開いたので、不思議に思い皆が扉の方に視線を向けた。

「「璃々」」両親の驚く声が響いた。

 リビングの入口付近に立ち止まり、目を見開き口をポカンと開けた、スラッとした女性が驚きの表情で突っ立っているではないか。

 大学生には見えない大人っぽい迫力のある美人さんで、暁の妹と聞いて納得する容姿だ。

「璃々、そんなところでマヌケな顔して突っ立ってどうした」

 暁の声が聞こえていないのか、全く反応がない。

「璃々?」母親がもう一度声を掛けた。

 そこで、ハッとした璃々はおもむろに芹の前まで行く。その様子をみんな固唾を飲んで見守る。

「せ、せ、せ」芹を指差し震える声で言葉を発するが後が続かない。

「えっ?」芹も戸惑う。

「せ、せ、芹奈様〜」

 言い切ったと同時に芹に抱きつく璃々。小柄な芹は、すっぽりと抱きしめられた。璃々からは、いい匂いがすると呑気に思っていた。

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