俺を嫉妬させるなんていい度胸だ〜御曹司からの過度な溺愛〜
 無事に手土産用の和菓子を受け取り目指すは芹の実家。

 車だと電車のように乗り継ぎがいらないので、普段より近く感じた。

 都会の真ん中の暁のマンションとは違い、閑静な住宅街に芹の実家はある。暁の実家のように高級住宅街ではないが、一軒一軒ゆとりのある造りの庭付きの家が続く。

 芹の生まれ育った街だと思うと感慨深い。

 住宅街の中でも、少し大きめの住宅があった。

「ここです。少し前に二世帯住宅にしたんです」

 玄関が二つあり、表札やポストも二つある。一軒ではあるが、全てを分けているようだ。

「こっちです」

 芹は右の玄関にあるチャイムを鳴らす。

「はい」

「お母さんただいま」

「芹、ちょっと待ってね」

 ガチャッと勢いよく通話が切られた。

 暁は、芹の母親の声で落ち着いていた緊張が再熱する。思わず深呼吸して落ち着ける。

 『ガチャガチャッ』と今度も勢いのよい音が響き、勢いよく玄関扉が開いた。

「おかえりなさい〜」

 元気な小柄な女性が飛び出してきた。歳を取った芹の姿が想像できるほど、よく似た可愛らしい女性だ。


 
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