俺を嫉妬させるなんていい度胸だ〜御曹司からの過度な溺愛〜
「えっ!」

 驚きと共に電話の向こうでは、『ガタガタガタ』と椅子が倒れる音がした。駿が慌てて立ち上がったのだろう。

「大丈夫ですか?」

「大丈夫じゃないです!一大事です!」

 芹は駿の心配をしたのだが、動転している駿には伝わらない。

「社長の来客が終わり次第そちらに伺います」

 急に仕事モードのスイッチが入ったようだ。一瞬にして口調から緊迫感が伝わる。

 それもそのはず、すでに製造工程に入っており、初回出荷の半数くらいまで完成していると連絡が入ったばかりだ。

 工場は、一ヶ月先の発売に向け全力で動き出している。

 駿は、慌てて電話する。相手は製造工場だ。情報漏洩の観点から、今回のソフトがどこで製造されているかすら、数人しか知らない。

 それ程までに、企業の情報管理は徹底されている。

「はい?」

 夜間に工場の電話に出るのは、長年の付き合いの工場の社長だ。

「新城堂の稗田です」

「ああ。昼間に順調だと連絡したばかりなのに、何かあったのか?」

「それが……」

「なんだ?」
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