俺を嫉妬させるなんていい度胸だ〜御曹司からの過度な溺愛〜
 受付の前で押し問答している香田社長の横を通り過ぎようとした女性が立ち止まる。 

「あれ?(げん)ちゃん?」

「おお〜芹奈ちゃんじゃないかぁ〜こんなところで会えるとは」

 定時で帰る芹が、ちょうど私服に着替えて通ったのだ。

「それはこっちのセリフ。ここで何してるの?」

「ああ。新城のボンに会いに来たんだが、アポがないと無理だと断られてたんだ」

「アポは取ってないの?」

「ないが、あちらも儂に用があるはずだ」

「そうなの?ここじゃ目立つから端に行きましょう」

 帰宅ラッシュに入る時間に大きな声で話していると目立ってしまう。

 源ちゃんを連れてエントランスの端に避け、芹はスマホである人に電話を掛けた。相手はすぐに出た。

「もしもし?芹どうした?何かあったのか?」心配そうな声だ。

「帰ろうと思ったら、エントランスで源ちゃんに会ったの。なんか、暁くんに用事があるみたい」

「源ちゃん?誰だ?」

「そっか、ちょっと待って『源ちゃん名字なんだっけ?』」

 暁にも芹が源ちゃんなる人物に質問している声が聞こえた。

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