俺を嫉妬させるなんていい度胸だ〜御曹司からの過度な溺愛〜
 女性の去った後のエントランスには、微妙な空気が流れている。

 暁も驚きから呆然としていて、ハッと我に返った時にはもちろん女性の姿はなく、自分だけが注目を集めているのだから居たたまれない。

「皆さん、仕事に戻って下さい」

 駿がエントランス全体に聞こえる声で言ったことでみんなが散っていく。

「駿」

 暁の一言で、駿には伝わった。女性が誰かを知りたいのだ。そして、今の様子からすると悪いことではなさそうだ。

 ただ、女性の方は望んでなさそうだが……。

「先に、オフィスに戻っていただけますか?」

「ああ」

 駿は、暁が専用エレベーターに乗り込むまで見送り、エントランスにある受付に戻った。

 受付でも目の前で繰り広げられている姿が丸見えだったのだ。来客がいないことをいい事に、先程の出来事を噂している。

「見た?あの子の転け方」鼻で笑っている。

「見た見た。私なら暁様の前であんな転け方したら立ち直れない〜」

「「アハハハハッ」」

「わが社の受付も質が下がったようですね」

「「えっ!?」」


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