【完】ハッピーエンドに花束を

【3】温もりたっぷりのキスを



 暁人と付き合って10日がたった。
 
 一緒にお昼ご飯を食べることも、一緒に寄り道をしながら帰ることも、毎日寝る前に電話をすることも、すっかり日常となっている。

 驚異的なスピードで仲良くなっていった私たちは、今では冗談すらも言い合えるような仲になっていた。
 
 これは愛情、というよりも友情を深めているような感じである。

 まぁ私もラブラブしたくて告白した訳じゃない。暁人と一緒に今を過ごせるだけで、それだけで十分だった。


「面白かったね」
「ね!最後のシーン、鳥肌立っちゃった」

 そして訪れた週末。私たちは映画館に来ていた。
 見たのはおととい公開したばかりのアクション映画。公開して最初の週末ということで、映画館も一層賑わいを見せていた。

 大迫力なシーンが盛りだくさんだった内容に、お互いに気分が高まっている私たちは「あのシーン見た?凄かったよね」「終始ドキドキしっぱなしだった」と感想を言い合っている。
 こうやって感想を共有し合えるのも、映画の醍醐味だ。

「誘ってくれてありがとう」

 次回作が待ちきれないよ。と嬉しそうに笑う暁人を見て、私も嬉しくなる。
 前回作から映画館で見ていたほど好きだった私は、せっかくならばとオススメがてら彼を誘ったのだ。

「こちらこそ、一緒に来てくれてありがとう」

 喜んでくれている姿を見て、誘ってよかったと心底思った。
 その表情を見ているだけで、心の内側がじんわりと温かくなる。

 続編の制作決定だと情報解禁されていたが、公開予定は来年の冬らしい。少し遠い先の未来だ。

「次も楽しみだね」
「そうだね」

 その次がないことは、もちろん分かっている。

 だって私たちはあと20日で別れを迎えるのだから。来年の冬に私たちが一緒にいる未来は残念ながらないのだ。
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