【完】ハッピーエンドに花束を
「本当に取るつもり?」
「まぁ見ててよ」
これくらい朝飯前だからと、勢い良く100円玉を投入する。本当に入れっちゃった、とクレーンゲームに向き合う彼を見ていた。
私だったら欲しいと思う前に諦めるだろう。堂々とクレーンゲームに向き合う姿から、どうやら本当に自信があるらしいと察する。
「多分一回で取れると思うんだけど」
動くアームを目で追う。それはやがて1番手前にあった人形の上で停止した。
そして、アームは降りていく。ドキドキと、その瞬間を待った。
そして。
「!・・・すごい」
見事にアームは人形を掴んだ。がっちりと掴んだソレは順調に運んでいく。
それだけでも驚いたのに、さらにアームはターゲットにしていたその横の人形のひもを引っ掛けていて、2個一緒に持ち上げていたのだ。
まさか彼も2個取れるとは思っていなかったのだろう。「天才かも」と自身の腕を自画自賛していた。全くもってその通りだと思う。
「本当に取れた!暁人すごい!」
「俺も驚いた」
はい、どうぞ。と、手に渡ったのは2つの人形。いざ手に入るとさらに可愛く思えてくる。
感激したまま人形を見つめる私に「ね、取れたでしょ」と自慢気に笑った。
「嬉しい!学校のカバンに付けるね」
「うん」
「でも1個は暁人に渡しておくよ」
そう言って1つは彼に渡す。