【完】ハッピーエンドに花束を

「食べる前にちょっといいかな」
「どうしたの?」
「・・・これ」

 緊張で震える手で渡したのは、簡易にラッピングされた箱。バッグの中で少し形が崩れ不恰好になったリボンに包まれたものを見て、すぐに勘付いた彼は「もしかして」と口を開く。

「バレタイン?」
「うん。あさって、2月14日だったから」

 用意していたのは、バレンタインのお菓子だった。本当は当日に渡そうかなと思っていたけれど、学校から帰ってバタバタ作ると失敗しそうだったから昨日作ったのだ。

 初めて好きな人に渡すプレゼントだったから、気合いを入れて手作りを用意してしまった。不器用ながらにもレシピ通りには出来たと思う。

 貰うとは思っていなかったらしい、暁人は「本当に?びっくりした」と動揺しながらも受け取ってくれた。

「中、見ても良い?」
「あまり期待はしないでね。味は保証しないから」
「手作りだよね。大変だったでしょ」

 ひもを解いて箱を開くと、中に入っているのはチョコレートブラウニー。混ぜて焼くだけで簡単と書いてあった。ナッツを混ぜ込んであるから、味はともかく見栄えは良い感じである。

 覗き込んだ彼は「美味しそう」と言ってくれた。
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