【完】ハッピーエンドに花束を
「その時、陰で泣き崩れている相馬くんに寄り添ってる暁人を見ちゃったの」
1番辛いはずの相馬くんはみんなの前で泣くことはなかった。
でも悲しくないはずなんてなかった。悔しくないはずなんでなかったのだ。
膝をついて崩れ落ちる相馬くんが見えてしまった時、話したこともないただの同級生の私でも胸が締め付けられるような苦しさを覚えた。
「その時の暁人さ、苦しさに寄り添うように一緒に泣いていて」
「・・・見られてたんだ」
「けがしたのは自分じゃないのに、苦しくて悔しい顔をしていて」
「うん」
「この人は人の痛みがわかる人なんだなって、そう思ったんだ」
それは上辺だけの同情じゃないことはすぐに分かった。1人じゃ抱えきれない暗い感情を、ともに涙を流すことで吐き出しているような気がした。
当時暁人の名前も分からなかった私は「きっとこの人は、人の痛みが分かる優しい人なんだろう」と思ったのだ。
「それからかな。暁人のことを目で追うようになったのは」
気付いた時には好きになってた、そう告げる。
それから同じ学年の人だと知って、名前を知って、片思いをし続けていた。今こうして付き合っているだなんて、去年の私は想像もしていなかっただろう。