【完】ハッピーエンドに花束を
「もっと大人っぽくなりたかったな」
「芽依はそのままでいいと思うけど」
「本当?」
「あぁでも、今日ちょっと化粧してるからいつもと雰囲気違うかも」
そう言って、彼は私のまぶたを触る。「キラキラしてるね」とお化粧していることに気付いてくれたのは嬉しいけれど、触ったらアイシャドウ取れちゃうから止めてほしい。
「もうあと4日後には卒業だからね。大学生になるんだし、もっとお化粧上手にならないと」
「・・・そっか、もう卒業まで4日しかないんだ」
「そうだよ」と返した声は震えていなかったか、心配になった。
泣いても笑ってもあと4日。4日後に私たちの関係は終わってしまうのだ。
最初は勢いで「卒業までの1カ月間付き合ってください」と告白したことから始まった関係だったけど、期限が迫るにつれて胸が苦しくなっていく。
「早かったね、1カ月」
「うん。もう私たち卒業なんだよ」
まだ訪れてもいない別れなのに、想像しただけでこんなにも息が苦しくなる。心が空っぽになって、この幸せな日々を手放すなと身体が叫んでいるような気がした。