【完】ハッピーエンドに花束を
「あ、やっぱりここにいた」
「・・・暁人」
姿を見せたのは、今はまだ彼氏である暁人。「みんなと写真撮らなくていいの?」と外に行くように促すと、彼は「後で撮るから大丈夫」と中に入ってくる。
「言ったでしょ。彼女は特別扱いしたいって」
「ふふ。私たちも記念に1枚、写真撮っておく?」
まだ暁人も私を彼女だと思ってくれているらしい。私は携帯をポケットから取り出してカメラを起動した。インカメにして、なるべく大きく写るように身体を寄せ合う。
「はい、チーズ」
カシャ、という音と共に画面に私たちの姿が保存された。うん、大丈夫。上手く笑えている。「後で送っとくね」と告げると、彼は「ホーム画面の背景にしようかな」と笑う。
そんなこと言ったって、今日で私たちは別れるのに。
会って早々別れ話をするのもなんだか気が引けるなぁ。そう思いながら私は深く深呼吸をした。心を落ち着かせて、口角を上げる。
「暁人、1カ月間私の我儘に付き合ってくれてありがとう」
大好きな暁人だからこそ、最後は笑顔で終わりたい。
「とても思い出に残る1カ月だった。毎日楽しかった。ずっとこんな日が続けば良いのにって、そう思った」
それなのに、彼の顔を見たら目頭がどんどん熱くなってくる。