【完】ハッピーエンドに花束を
「は?遠距離?」
すると目を見開いて固まった暁人。
「だって東京の大学に行くんでしょ?私こっちの大学だから」
「待って、芽依。どこからの噂?」
今度は私が固まる番だった。涙の別れという感動的な雰囲気から一転。私たちの間を流れる空気が変わって、状況を察せない私はぱちぱちと瞬きを繰り返す。
「あー・・・なるほど。そういうことかぁ」
暁人はどこか納得したような表情で息を吐く。柄にもなく緊張で震えていた先ほどの彼はどこにいったのだろう。
突然スイッチが切れたかのように「だから1カ月間だったんだ」と、いつの間にか通常運転に戻っていた。
全然状況を整理できない私は頭を抱える。
「えっと、待って。どういうこと?」
「俺、全然地元の大学に行くんだけど」
「・・・へ?」
だから、進学するのは地元の大学!と、言い切った暁人。
「どんな噂聞いたか知らないけど、芽依とそんなに離れていない大学だから」
東京は?と尋ねると、だから行かないってば。と口を尖らせる。
「だから会おうと思えば毎日だって会えるよ」
「うそ、」
「嘘じゃない」
暁人は言った。確かに東京の大学にも合格していたらしい。しかしその直後に地元の大学の合格にしたらしいのだ。元々第一志望にしていたこっちの大学に進学することに決めたのだと、彼は1から10まで説明してくれた。