【完】ハッピーエンドに花束を
信号が青に変わって、再び歩き出した私たち。渡り終わる頃に「じゃあさ、」と望月くんは口を開いた。
「せっかくだから、お互い下の名前で呼ぼうよ」
「!・・・うん!名前呼びたい!」
そうしよう、と声を上げる。本当は付き合ってもらっている立場なのに、名前呼びはずうずうしすぎるかなと諦めていたのだ。
願ってもいなかった名前呼びを、まさか望月くんの方から提案してくれるとは思いもしなかった。
「改めてよろしくね、芽依」
「よろしく、暁人・・・くん」
ちゃんと口にすると思いの外恥ずかしくなって、「ちょっと照れちゃうね」と照れ笑いしてしまう。
「呼び捨てでいいよ」
「うん、分かった」
暁人、暁人、暁人。と心の中で復唱する。
名前を呼ぶだけで胸がドキドキした。名前を呼ぶだけで顔に熱が集まってくる。
そっか、彼氏がいるってこんな感じなんだ。と、期間限定ではあるものの、改めて望月くん───暁人が恋人になってくれた奇跡に感謝である。
「せっかくだから高校生らしいことしたいな」
「いいね、それ。何がしたい?」
「一緒に学食食べたいな。あと制服デートで、映画見たりカフェに行ったりするの」
そう告げると「分かった。全部しよう」と、嫌な顔をひとつせずに全て賛成してくれる。
欲を言えば制服でプリクラも撮りたい。一緒に撮ってくれるかなぁ、と思いながら暁人の方を盗み見る。まぁ、それはまた今度言ってみよう。