カラダの関係は、お試し期間後に。
「それに、今回のことでわかったんじゃない?“女は所詮、力じゃ男には敵わない”って。……お前がどんなに口がうまくて、意思が固くて、(したた)かでもな」

悔しいことに、その言葉の1つ1つが綾乃の中に納得という形で浸透していってしまった。
それでも抗いたい気持ちが込み上げてくるのはなぜなのだろうか。

“だって”、“でも”、“私はこうなの!”…そんな自己主張の言葉が頭の中にポツポツと湧いてはくるものの、こうして助けてくれた葵に言い返すことなど、できなくて当然だった。
そして、ふと浮かび上がって来た1つの疑問を綾乃は口にした。

「そういえば、あんた…私があの店にいるってどうしてわかったの?」

その問いかけに、葵はピクッと反応した。

「私、今夜の予定はあんたには話さなかったと思うけど」

そして、しばしの沈黙の後…
葵の苦し紛れの言い訳が始まる。

「そりゃあ……ぐ、偶然だよっ!」
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