カラダの関係は、お試し期間後に。
横目でチラリと葵に目をやると、葵は石に座り込んだまま顔を両手で覆っていた。
そして、咲子の話はまだ続く。

「それで桐矢くん、仕事ほっぽって会社飛び出して行っちゃったんだけど……もしかして、今一緒にいたりして…(笑)」

そのまさか、だ。

「…うん、今私と一緒にいるけど?」

すべてを理解した綾乃がニヤリと笑うと、葵は大きなため息をついてうなだれた。

「そっか、じゃあ落ち着いたら会社に戻るように桐矢くんに伝えててもらえる?」

「うん、わかった。ありがとね、咲子!」

忍者のように抜き足差し足で立ち去ろうとする葵を、綾乃は背後から呼び止めた。

「…ちょい待ちっ!あんた…仕事中に何やってんのよっ!」

そしてよくよく考えてみると、綾乃は1つの疑惑へとたどり着いたのだった。

「あんた……まさか、本当は私のことを助けに───」
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