カラダの関係は、お試し期間後に。
そして、その記憶が一瞬にしてまた綾乃を苛立たせるのだ。


───悔しい。


「(…ふん!バカな奴っ!私にはこんなにもハイスペックな男が言い寄ってくるとも知らずにザマァミロってんだ!!)」

心の中で葵のことを罵倒しながら、ワイングラスの中身を一気に喉に流し込む。
それを見て、御曹司くんは満足げに口元を緩ませるのだった。

「すごい飲みっぷりだね、綾乃ちゃん。(笑)そんなにこのワインが気に入った?」

“もう一杯!”と言わんばかりに空になったワイングラスをテーブルに叩き置くと、綾乃は窓ガラスの向こう側に散りばめられた宝石箱を眺めてから、御曹司くんに向き直って微笑んだ。

「…ええ、この夜景もこのワインも…何もかも吹っ切れさせてくれるぐらい、いい味わいですから!」


──その、翌朝。

スズメのさえずりとともに、綾乃はベッドの上で目を覚ます。
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