カラダの関係は、お試し期間後に。
告げられたことの意味が、まったくわからない。
しかし、昨夜の記憶がワインを何杯も飲み続けていた場面からプッツリと途絶えていることが、その現実性を物語っているのだ。
そして、それは一気に焦りと不安に変わっていった。

「も、もしかして私……やらかした?」

青ざめて独り言のようにつぶやく綾乃の隣に腰掛けると、御曹司くんはフッと微笑んだ。

「お酒が入ったキミって…見かけによらず大胆なんだね」

その一言ですべてを理解した綾乃は恥じらいもなく全裸のままベッドから降りると、床に散らばっていたままの自分の下着と服を掴み取る。

「ごめんなさい…御曹司くん、私…っ仕事があるので帰ります…!!」

「え……あ、綾乃ちゃん?!」

───そこからは、なんとか必死に平常を装うことで精一杯だった。
いつもと同じように出社し、上司に挨拶をして仕事に取り掛かる。
そんな、なんの変哲もないいつもの朝。
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