カラダの関係は、お試し期間後に。
痛いところを突かれて言葉に詰まる綾乃に、葵は背中を向けて扉に向かって歩き出した。

「もうやめろよ、男を試すとか、そんなの…。お前はさ、そのまんまのお前で勝負してろよ」

無言のまま立ち尽くす綾乃を横目で流し見て、葵がドアノブを掴んだ時…綾乃は声を上げる。

「私は幸せになるもん!だって、私……昨夜彼と寝たんだからっ!!」

葵の、ドアノブを掴んで回そうとする手がビクッと止まった。
そして、一度外れたストッパーが止まることは、もうない。
綾乃はこれ見よがしに、誇らしげに葵の背中に向かって次々と投げかけ始めた。

「…ふふんっ!昨夜はゴージャスなホテルにお泊まりしてぇー(全然記憶にないけど)、彼ったらすっごく大胆でテクニシャンでぇー(まったく微塵も覚えてないけど)、それはそれはもう、甘くとろけるような一夜を───」

綾乃を振り返ると、葵はそのすべてを聞かずに怒りを露わにした。
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