君と奏でた、あの日の詩。

─────目が覚めると、いつもの部屋の天井だった。


また、あの日の夢を見ていた。


菅野凌羽(すがのりょう)、15歳。


今日から高校生になる。


名前だけは格好いいが、特にこれと言って特徴のない、平凡な男子だ。


「凌羽!遅刻するよ!」


ベッドの上でぼーっとしていたら、姉の羽奈乃(はなの)が入ってきた。


「って…、なんだ、起きてたの?」


羽奈乃は俺が今日から行く高校の制服をきちんと着こなして、俺の部屋の入口に立っている。


「姉ちゃん…あのさ…。」


俺は夢に出てきたあの少女のことを羽奈乃に聞こうとした。


「ん?」


羽奈乃は緩く巻いた茶色の髪をふわっとさせて俺の方を不思議そうに見つめる。


「…いや、なんでもない。」


また、聞けなかった。
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