君と奏でた、あの日の詩。
夢の少女のことなど聞いたら、羽奈乃はきっと心配する。
そう思うと、いつも聞く勇気がでない。
「凌羽、大丈夫?」
黙ってしまった俺のことを心配そうに見つめてくる。
そんな羽奈乃の顔を見てハッとする。
「…大丈夫!ほら、着替えるから姉ちゃんは出て!」
笑顔を作ってそう言うと、羽奈乃は安心したように笑って部屋を出ていった。
羽奈乃が下に降りていったのを確認し、俺はため息をついた。
そう、この夢は俺が小学生の時に体験したことだった。
確かに体験したはずなのに、俺はあの女の子のことを何も知らない。
あれから、どこを探してもあの子は見つからなかったんだ。