先生、私がヤリました。
また電車に乗って、五つ目の駅で降りました。

昼間とは全然違う駅に見えました。
閑散とした住宅街は夜になるともっとシンとしていて、リズちゃんのアパートまでに通った商店街も、シャッター街になったと同時にこの街から住人達も消してしまったみたいに思えました。

私は最初に消しゴムの女の子と会った自販機の前で立ち止まって、キャリーケースからリズちゃんを出しました。

アパートはもうすぐそこです。
ここからは一人で歩いてって言いました。
お姉ちゃん、後ろから見てるから大丈夫、って。

「リズちゃん。今日のことは誰にも内緒だよ。また遊びに来てね。」

ポケットに入れっぱなしだった熊の鍵をリズちゃんに渡しました。
チャリンって音を立てて、鍵は私の手からリズちゃんに渡りました。

リズちゃんは私に手を振って、背中を向けました。
十分に距離を取ってから、私はキャリーケースを地面から浮かせて、後ろからゆっくりついていきました。

キャスターがアスファルトを擦る音は結構響くので、夜は要注意なんです。

無事、リズちゃんは不審者に声を掛けられることもなく、アパートの中へと消えていきました。
外から見ても、リズちゃんのおうちの窓には明かりが灯っていなかったので、お母さんが帰ってる心配も無さそうでした。

見送ってから、私はまた電車に乗って自分の街へと帰りました。

家に着いたらハヅキくんは何度も何度も、リズちゃんとまた遊べるかしつこいくらいに聞いてきました。

サプライズは大成功したみたいで良かったです。
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