先生、私がヤリました。
「違うのよ。それに関しては全然、不審なんかじゃないの。お友達が遊びに来てるとか、近所の子を預かってるとか。そういうことも考えられるし。ただね、通報をしてくれた方が、親戚の子でも来てるのって尋ねたら、違うって…。」

まくし立てるように言った女の人を、男の人が咎めるような目でチラッと見ました。
女の人は文字通りハッとした顔で持っていたノートに視線を落としました。

男の人が女の人の先輩みたいですね。
女の人はまだ捜査に慣れてない感じがしました。

念の為、私は訊きました。

「通報って、誰からですか？」

「それは言えない。」

思った通り。
男の人が咎めるような目をしたのは、女の人が喋りすぎたからです。

だってあんなの、誰が通報したかバラしてるのと同じじゃないですか。
まぁ、最初から知ってましたけど。

「そうですか。確かに私は一人でした。でも通報した方にも言いましたけど…」

知ってるよ私、誰が通報したか、って挑発するような言い方になりましたけど、わざとです。

「演技の練習をしてたんです。演劇部なんですよ。今度、子どもと大人の心が混ざった女性の役をするんです。」

「そうですか。」

男の人はドアの隙間から部屋の中を見渡すように視線を走らせました。
リビングに繋がるドアは閉めてあったので、玄関から見渡しても、そこまでの空間しか見えません。
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