先生、私がヤリました。
「リズちゃん、はーくんのこと好き?」

もう言葉を喋れないリズちゃんはコクコクと頷くだけでした。

「それじゃあはーくんの幸せ、ずっと祈っててあげてね。」

「…。」

「大丈夫だよ。リズちゃん。あなたは死んだりしない。ずっと生きるの。ずぅーっと、はーくんの中で。生き続けるのよ。」

「お…おね…ごめ…」

「さよなら。リズちゃん。」

「おね…」

「苺パフェ、美味しかった?良かったね。幸せになれて。」

もう一度、リズちゃんの口にスカーフを巻きました。
それから玄関に置いてあったナイロンの紐でリズちゃんの手と足を縛りました。

あははははは。
紐はぁー、雑誌を梱包するのに使っただけですよ?
そのまま玄関に置きっぱなしにしてただけですって。

常習犯みたいに言わないでください。

それから、私はリズちゃんの体を浴槽にそっと入れました。
私の手から離れた時、スカーフの下でンーッンーッって小さく声が聞こえました。

「ごめんね。リズちゃん。お姉ちゃんがバカだった。やっぱりはーくんにお友達なんて要らなかったのに。」

私、リズちゃんのこと好きでした。
リズちゃんも孤独を知ってたから。
小さい体で。
私よりももっと重たい孤独を。

蛇口を浴槽側に向けて、水を出しました。
湯沸かし器の電源は入れたままだったので、次第にお湯に変わりました。

最期くらいあったかいほうがいいよね。
凍えるよりマシだよね。

捕まえられた虫みたいにバタバタしてたリズちゃんが、少しずつ少しずつ水に浸かっていくのを見届けてから風呂場から出て、浴室の換気扇をつけました。

お湯を使ってるので。
マンションって湿気が溜まりやすくて嫌なんですよね。
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