先生、私がヤリました。
十一月。

隣人の通報のせいで一度私の家に聴き込みにきたあの警察の人が、またやってきました。

テレビで報道されてる女の子と男の子は、絶対にあの女子高生と関係があると、再度通報があったそうです。

「お世話になっております。」

ドアにチェーンをかけたままそう言った私に、警察の男の人は「変な挨拶だな。」って言いました。
なので私は「嫌味です。」って返しました。

「また同じ人が?」

「同じ?」

「通報した人です。」

「…言えないな。」

「そうですか。何度お越し頂いても答えは同じです。来るなら証拠とか逮捕状なりなんなり持ってきてください。そしたら応じますから。」

男の人は面倒臭そうに鼻で息を吐いて、「あんまり大人をからかわないほうがいいぞ。」って言いました。

証拠ももちろん調査中で、それもじきにまとまった形になる。
仮になんらかの形で関わってしまっただけだとしても、変に黙秘を続けると心象が悪くなるって言われました。

凄いですね。
完全に被疑者だって決まったわけじゃないのに、この時点で圧かけてくるなんて。

「でも任意ですよね?」

「あのな、」

「任意ですよね?」

「…あぁ。」

「だったらまだ話せません。刑事さん。」

私に呼ばれて、刑事さんは私の目を見ました。
仕事にプライドがあるのか無いのかよく分かんない目って思いました。
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