先生、私がヤリました。
帰宅したら、インターホンの液晶モニターの「通知」の小さいボタンが青く点滅してました。

留守だった時、インターホンを鳴らした人の映像を録画してくれてるお知らせです。

三件ありました。
全部同じ人達で、カメラに向かって警察手帳を見せてました。

男の人が二人。
二回やってきたあの刑事さんは居ませんでした。

「通知」の横の「終了」を押して、モニターを消しました。

「ハヅキくんただいま。」

「まだお外明るいよ。」

「そうだね。」

ケージからハヅキくんを出してから、「お着替えしようか。」って言って、頭を撫でました。

「お外、出るの?」

ハヅキくんがこの部屋に来て五ヶ月。
外に出したことは一度もありません。
ベランダにすら。

ハヅキくんは驚いた顔をしてました。

「んー。うん、そうだね。」

「パパ、まだ僕のこと見つけてないよ。」

ハヅキくんの細くてやわらかい髪をくしでとかして、バンザイをさせて部屋着にしていたプルオーバーを脱がせました。

着替えくらい一人で出来ます。
でも、その日は私が着替えさせたかったんです。
これが最後だから。

ハヅキくんはフランネル素材のシャツとニットベストがよく似合いました。
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