先生、私がヤリました。
「おねーちゃん、どこに行くの?公園?」

「もうすぐパパが迎えにくるよ。」

「でも…僕…パパに見つかってない…。」

「あのね、かくれんぼは引き分けになったの。」

「引き分け?」

「勝ってもないし、負けてもない。でもね、お姉ちゃんが負けちゃったの。」

ハヅキくんを私の膝に座らせて、後ろから小さい手を私の手で包みました。
本当に小さい。
リズちゃんもこんな感じだったっけ。

「お姉ちゃんと暮らすのは今日でおしまい。ハヅキくんは自分のおうちに帰って、パパとママと暮らすのよ。」

「またおねーちゃんと遊べる?」

「…おねーちゃんね、ちょっと遠くに行かなきゃいけないの。」

「リズちゃんの所?」

「リズちゃんよりは近いけど、ハヅキくんからは遠い。だからもう…、会えないかな。」

「ヤダ!僕、おねーちゃんとまたかくれんぼしたい!」

ハヅキくんが私のほうに正面を向けて、私の顔を見上げました。
両手でハヅキくんの頬をつまんだらぷにぷにでやわらかくて、小さい。
ハヅキくんはこんなにも小さいんだって…だからまだ戻れる。
ごめんねって思いました。

「だいじょうぶだからね。ちゃんとご褒美は買ってもらえるから。きっと。」

「そんなのいらない!おねーちゃんと遊べないならいらない!」

「ハヅキくん。」
< 214 / 236 >

この作品をシェア

pagetop