先生、私がヤリました。
ハヅキくんを膝から下ろして、学校の鞄からヒーローの、あの缶バッジを取り出しました。

「お姉ちゃんからもご褒美。」

「わぁ…!」

缶バッジを受け取ったハヅキくんは嬉しそうに笑ってくれました。

「お外に出たらね、もっといっぱいあるから。パパと一緒に集めてね。」

「うんっ!」

ピンポーンって、インターホンが鳴りました。
モニターにはまた同じ人が二人映ってました。

立ち上がって、モニターの「通話」を押しながら返事をしました。

私が高校生だって知ってて来てると思うんですけど、普通平日の昼間には学校に行ってると思いません?

私が普通じゃないから居ると思ったんでしょうか。

「解錠」ボタンを押して、エントランス前の自動ドアを開けました。

私はハヅキくんの所に戻って、ギュッと抱き締めました。

「おねーちゃん…?」

「幸せになってね。」

「楽しいってこと?」

「うん。それから嬉しいってこと。」

「分かった。」

「ハヅキくんは良い子。パパがきっと愛してくれる。もっと大きくなったら、もっともっとハヅキくんを愛してくれる人にも出会えるからね。ハヅキくんは、正しい大人になってね。」

「おねーちゃんは?」

「ん?」

「おねーちゃんも僕が好き?」

「…好きよ。当たり前でしょ。」

ハヅキくんの顔を見たら、ハヅキくんは笑ってました。
だから私も笑いました。

喉の奥からじわじわと込み上げていたものをグッと飲み込んで。
笑いました。

玄関のインターホンが鳴りました。

ゲームオーバーです。
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