先生、私がヤリました。
先生は少しバツが悪そうな表情をして、「あー…。」って呟いてから、キョロキョロと教室を見回しました。

教室にはちゃんと、私と先生だけです。
ドアの外にも誰も居ません。

「内緒な?お前、クラスの中では一番可愛いよ。」

言葉が出ませんでした。
全員に言ってるの?
でもみんなは三者面談だし。親の前でそんなこと言うわけ無い。

ううん。もしかしたら学校で二人きりになってコソッと言ったりしてるのかも。

でも、机に肘を付いて手の平で顔を隠すように横を向いた先生の表情は、そんな風には見えませんでした。

「いち…ばん…?」

「…カースト上位って言うの?女子ってグループの中でも中心グループとかあるだろ。そいつらよりもお前は可愛いよ。」

「そんなこと言っちゃっていいの?」

「言っちゃったもんはしょうがないだろ。本当のことだし。」

私は恥ずかしくなって俯いていたと思います。
視界には自分の上靴の先の汚れがあって、急に恥ずかしくなりました。
先生に汚いって思われたくないからすぐに洗おうって決めました。

奥さんには悪いなんて思いませんでした。
可哀想だなとは思いましたけど。

だって、自分の旦那さんが生徒に可愛いって言いながらこんな表情してるなんて、私なら耐えられません。

女子がこんなに居る職場ってだけでも嫌なのに。
それがオーケーってことは、奥さんって案外、放任主義なのかも。

でも頭の中で先生の家族像にピシッてヒビが入って見えて、私は口角が上がってしまうのを必死で隠しました。
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