先生、私がヤリました。
もしかしたらこの子は初めての人生じゃないのかもって、ちょっとファンタジーなことさえ頭によぎりました。

二回目とか三回目で、しかも前世でも誘拐された経験があって、その教訓が染み付いてるとか…。

そんなことを思ってしまう自分が馬鹿らしかったんですけど、そう思うくらいにハヅキくんは出来過ぎてましたから。

ハヅキくんは「たまごのサンドイッチが食べたい」って言いました。
賞味期限間近の食パンと、卵があったのでちょうど良かったです。

厚焼きのと、ゆで卵にしてマヨネーズで和えるのと二種類作りました。
ハヅキくんは厚焼きのほうがお気に入りみたいです。

嬉しそうにサンドイッチをパクパク食べてくれて、オレンジジュースを飲みながら、ハヅキくんは「お部屋に入らなくていいの?」って私に聞きました。

「お部屋?」

「あそこ。」

ケージを指差してます。
たぶん、ハヅキくんの中では私が制服を着てる時はケージの中って刷り込まれていたんだと思います。

「今日はいいんだよ。」

「どうして?」

「お姉ちゃん、今日はハヅキくんと一緒にここに居るから。」

「ほんとに!?」

「うん。一緒に絵本読もうか。」

「うん!これがいい!」

ハヅキくんが差し出してきた絵本を受け取って、一旦テーブルに置いてから、「着替えてくるね」って言ってハヅキくんの頭を撫でました。

嬉しそうなハヅキくんの目を見ていたらさすがに胸が痛みました。
「一般的には」、私は酷いことをしているのに、ハヅキくんは私を信じてるんだなって。
ハヅキくんが泣いてしまう原因を作っているのは私なのに。
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