とある悪役令嬢は婚約破棄後に必ず処刑される。けれど彼女の最期はいつも笑顔だった。
「なんだと? アメリア嬢が、聖女を階段から突き落としただと?」

 出先から戻り、報告を受けた僕は苛立ちを声に滲ませた。
 階段で足を滑らせて落ちた聖女は、誰かに押されたと嘘の証言をしたというのだ。

「何が聖女だ! 悪女の間違いじゃないのか!?」


 さらに数日後、聖女暗殺未遂事件が起き、アメリア嬢が疑われる事になった。
 結局彼女は、前回と同様に婚約破棄後、投獄された。

 自分の考えの甘さに腹が立った。

 それからは、僕は魂が抜けた様な日々を送った。
 イースト国へ乗り込み、彼女を救う事も考えた。

 ウエスト国の王族のみが使える、()()()()()()を使えば、数十メートル先までなら一瞬で移動出来る。
 彼女が投獄されている地下牢から救出する事も可能だ。
 だが、この力を他国で使う事は強く禁じられている。

 あの男の言う事を信じるしかない。もう一度、過去に戻ってやり直すしか……。

 彼女が処刑される日、僕は自室で静かにその時を待った。
 処刑執行の予定時間が過ぎた頃、あの時と同じ様に世界にひび割れが起こり始め、この世界は崩壊した。

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