とある悪役令嬢は婚約破棄後に必ず処刑される。けれど彼女の最期はいつも笑顔だった。
「くそ!!! 今回も同じか!!!」

 ガンッ!! と机に両手の拳を叩き付けた僕は、冷静さを完全に失っていた。
 十回目となる今回も彼女は投獄されてしまったからだ。

 苛立つ原因は他にもあった。
 六回目となる目覚めの際、一日も経たずに急に世界が崩壊した。
 何が起きたのか分からないまま始まった七回目では、たったの一週間で世界が崩壊した。

 まさか、魔法が不安定になっているのか?

 その後は焦りからミスを連発し、王太子としても頭を悩ませる日々が続いた。彼女を救う方法を模索するが、進展は見られないまま、時間だけが過ぎていった。
 同じ事を繰り返す時間に嫌気がさし、休むことなんて出来ない日々。体力的にも精神的にも、もうとっくに限界を超えていた。

 ただ彼女を救いたい。彼女に生きていて欲しいだけなのに。 何の罪も犯していない、一人の女性の死を止めることが、どうしてこんなに上手くいかないんだ!

 今回も彼女は処刑されてしまう。
 それなら、もうこの世界で僕が何をしても意味は無い。

 思えば僕は、過去に戻って一度も彼女の姿を見ていなかった。

 彼女に会いたい。

 とにかく一目だけでも、彼女の生きている姿を確認したかった。
 僕は王太子としての全ての責務を投げ出し、彼女が処刑される場所――イースト国へと向かった。

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