とある悪役令嬢は婚約破棄後に必ず処刑される。けれど彼女の最期はいつも笑顔だった。
side アメリア
「婚約破棄したそうですよ」
「え?」
侍女の口から飛び出したその言葉に、私は反射的に反応した。
珍しく興味を示した私に、少し驚いた侍女は、もう一度丁寧に教えてくれた。
「ウエスト国のエドガー王子が、婚約者との婚約を破棄されたそうです。しかも、急に王位継承権を第二王子に譲ると言ったきり、行方が分からなくなったそうですよ。噂によると、何処かの令嬢と駆け落ちしたらしくて……今、凄い騒ぎになっていますよ」
そんな話、今まであったかしら?
エドガー王子とは、十歳の時に一度だけ会った事がある。
流れる様な艶のある黒髪、真っ青で透き通った瞳をした、とても綺麗な男の子だった。
私の髪飾りを壊した事を気にして、涙を浮かべて震える姿を思い出し、懐かしくて少しだけ笑ってしまった。
ウエスト国での彼の人気は高く、イースト国でもその名は知れ渡っていた。
それにしても、駆け落ちだなんて……なんだか羨ましいわ。私もそんな風に何かを捨てられる程、誰かに愛されてみたかったわ。
それからは特に変わった事も無く、いつもと同じ日々を繰り返した。
そして、訪れたいつもの祝賀パーティー。
「そなたとの婚約は、今この瞬間をもって破棄する! そなたが聖女を暗殺しようと企てていた事は分かっている!」
お馴染みのセリフを耳にして、私は深いため息をついた。
「え?」
侍女の口から飛び出したその言葉に、私は反射的に反応した。
珍しく興味を示した私に、少し驚いた侍女は、もう一度丁寧に教えてくれた。
「ウエスト国のエドガー王子が、婚約者との婚約を破棄されたそうです。しかも、急に王位継承権を第二王子に譲ると言ったきり、行方が分からなくなったそうですよ。噂によると、何処かの令嬢と駆け落ちしたらしくて……今、凄い騒ぎになっていますよ」
そんな話、今まであったかしら?
エドガー王子とは、十歳の時に一度だけ会った事がある。
流れる様な艶のある黒髪、真っ青で透き通った瞳をした、とても綺麗な男の子だった。
私の髪飾りを壊した事を気にして、涙を浮かべて震える姿を思い出し、懐かしくて少しだけ笑ってしまった。
ウエスト国での彼の人気は高く、イースト国でもその名は知れ渡っていた。
それにしても、駆け落ちだなんて……なんだか羨ましいわ。私もそんな風に何かを捨てられる程、誰かに愛されてみたかったわ。
それからは特に変わった事も無く、いつもと同じ日々を繰り返した。
そして、訪れたいつもの祝賀パーティー。
「そなたとの婚約は、今この瞬間をもって破棄する! そなたが聖女を暗殺しようと企てていた事は分かっている!」
お馴染みのセリフを耳にして、私は深いため息をついた。