とある悪役令嬢は婚約破棄後に必ず処刑される。けれど彼女の最期はいつも笑顔だった。
「だって今日はこんなに晴れているではありませんか。それに僕もいます。必ず貴方を守り通してみせます」

 そうだ。今回はいつもと違う。空は晴れているし、なによりも貴方が側に居てくれる。
 それだけで、何もかもが上手くいくような気がする。

「そうね……貴方と一緒なら、きっと何があっても大丈夫だわ」

 私は今、数年ぶりに希望という言葉を思い出した。
 絶望しか考えられなかった私は今日でおしまい。
 これからは希望を胸に、生きていこう。

「ではアメリア嬢。これから私と共に、北にあるノース国へ向かいましょう。私達が住む住居も用意しております。そこで新たな人生を歩むのです。貴方が今度こそ、幸せになる人生を」
「ええ……でも、エド。貴方もよ? 貴方も誰よりも幸せになるの。でないと、私はきっと幸せにはなれないわ」

 私の言葉に、エドは一瞬キョトンとするが、すぐに吹き出して笑った。

「もちろんです。それに僕は、貴方の隣にいられるだけで、誰よりも幸せになれます」

 その言葉に、私の心臓は大きく跳ねた。
 これが噂に聞く『ときめき』というものなのかしら。
 なんだか体も熱くなり、心臓の鼓動がドキドキと煩く騒ぎ出した。
 きっと私が彼を好きになるのに、そんなに時間はかからない。

 私は彼の手に引かれて歩み出した。
 私の道はもう途切れていない。きっと何処までも続いている。そんな気がする。
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