とある悪役令嬢は婚約破棄後に必ず処刑される。けれど彼女の最期はいつも笑顔だった。
「……なんでなの?」

 再び私は目覚めてしまった。一年前に時を戻して。
 
 あれは予知夢じゃなかったの? もしかして、私は過去に巻き戻ってるってことなの!?

 その疑問が確信に変わったのは、再び聖女の姿を確認した時だった。
 よく知ったその姿を見た私は、聖女が現れてから私が死ぬまでの一年間を繰り返しているのではないかと思い始めた。
 
 三回目となる今回は、少し慎重に行動する事にした。

 遠目から聖女を観察していると、彼女のピンチには必ず誰かが駆け付けている事が分かった。
 それは一人だけにとどまらず、多方面で人気のある男性陣が、聖女が困っていると決まって現れた。

 さすが、聖女様はみんなに愛されているのね。
 そんな光景を見ながら、私はある事に気付いた。
 聖女は私ではなく、あの男性陣の誰かに守られる事を望んでいたという事を。

 だからあの時、わざと足を滑らせて私の仕業に……つまり、私は邪魔だったって事ね。
 あまり聖女には近寄らない方が良さそうね。遠くから見守っていましょう。

 それなのに――。

 聖女暗殺未遂事件が今回も発生した。
 事前に私は、王太子に警告していた。
 誰かが聖女の命を狙っているから、気を付けて――と。
 だけどその発言が、逆に私が怪しいと疑われてしまった。

 結局、今回も私は婚約破棄後、処刑された。

 そして目を覚ます。一年前の同じ日に。

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